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節分の縁起物とされる福茶とは?意味や由来、作り方についてご紹介

福茶は、昆布や黒豆、山椒、梅干しなどを加えたお茶です。邪気をはらう力があるとされ、節分などの節目に欠かせない縁起物の健康茶として、古くから飲み親しまれてきました。
ところが、時代の変遷とともに、福茶の習慣や風習は廃れつつあります。文化とも言える風習が廃れることほど、寂しいものはないですよね。
縁結びの街「出雲」のお茶屋・茶三代一(ちゃさんだい)です。
今回は、改めて福茶を知ってもらうために、福茶の意味や由来をご紹介します。福茶の作り方についても触れるため、ぜひご覧いただけますと幸いです。

そもそも節分とは

福茶について説明する前に、節分とは何なのかご紹介します。
節分はもともと「節を分ける」、つまり春夏秋冬の季節の変わり目を指します。昔は、それぞれの季節の始まりである立春と立夏、立秋、立冬の前日を節分と呼んだため、節分は年に4回あったのです(注1)
その後、旧暦では、立春が一年の始まりだったことから、最も重視されるようになり、その前日を「節分」と言うようになりました。
節分にちなんだ豆まきの行事は、季節の変わり目である節分が邪気(鬼)が飛び込みやすいことから定着した邪気払いの風習であり、中国から伝わりました。
中国から伝わった豆まきの行事は、中国の同様に、宮中行事として伝わり、「追儺(鬼やらい)」という行事になりました。追儺は、文武天皇時代の708年に始まったと言われています。

正月や節分に飲まれる福茶とは

福茶は、その名の通り、幸福を招く縁起物として飲まれるお茶を意味します。地方によって多少は形式が違うものの、一般的につけ梅や切り昆布、粉山椒などを入れ、健康長寿や無病息災を願って元旦や節分に飲まれています。
江戸時代後期の風俗、事物を記した百科事典「守貞漫稿」では、「江戸にては、おおぶくと云はず、福茶と云う。元日、二日、三日、六日、七日、十一日、十五、六日等、数回これを飲む。あるひは、三ヶ日これを飲む家もあり。」と記されており、実際に江戸時代になる頃には、元日から小正月の1月15日にかけて福茶が飲まれていたことがわかります。
なお、福茶はさまざまな呼び名があり、単一ではありません。江戸や江戸近郊の年中行事を略説した板本「東都歳時記」では、福茶を大茶と記した例もあるようです(注2)。

福茶の由来

福茶の由来は、西暦960年に端を発します。当時は都で疫病が流行していたのですが、僧侶であった空也上人が「観音様に献上したお茶を飲めば良い」との霊夢をみて、夢の通り、観音様に献上したお茶を民衆に施したところ、たちまちに病魔が消え去りました。
時の天皇であった村上天皇は、この功績を讃え、そのお茶を「皇(王)服茶」と名付けました。以来、この皇服茶を飲む習慣を、万病を払う習わしとしたのが始まりとされています。
さらに、皇服茶の服が「福」につながることから、「福茶」として大衆に広がり、新年のお祝い茶として定着しました。
その後、室町時代には、当時のお茶請け(茶席で添えられるお菓子)だった梅干しと結び昆布、大豆を入れて飲むようになりました。梅は年を重ねる、昆布は喜ぶ、大豆はまめに働くといった願いを込めた言葉遊びから取り入れられたと言われています。
ちなみに、京都の六波羅蜜寺は、今もなお年始の行事として、福茶を皇服茶と称し、無病息災を願う参拝客に振舞っています。

福茶は邪気払いの節分の縁起を守る際に有効

福茶は、年の数だけ福豆を食べ、邪気を払うという節分の縁起を守る上で有効だとされます。なぜなら、年の数の豆にお茶を注ぎ、福茶として飲むと、食べたのと同じご利益があると言われているからです。
節分の厄払いでは、実際の年齢よりも1つ多く豆を食べるのが縁起とされます。それだけに、食べたのと同じご利益を得られる福茶は、福豆を食べる数が多い年配者などにありがたい風習と言えるでしょう。
ちなみに、実際の年齢よりも1つ多い年(数え年)の数だけ豆を食べる考えは、1月1日に全国一斉に年を取ると考えられていた昔の年の数え方からきていると言われています。

福茶の作り方

福茶の作り方はとても簡単です。吉数で縁起が良いとされる3粒の福豆に加え、塩昆布と1粒の梅干しを全部入れ、熱湯を注げば完成します。
ただ、福豆は熱湯に注ぐ前に、フライパンで焦げ目が付くくらい炒るのがオススメです。フライパンで福豆を炒ると、福茶がより美味しくなるとされ、煎茶の葉を入れて福豆を焙じる家庭も少なくありません。

全国各地の福茶の習わし

最後に全国各地の福茶の習わしについて紹介します。
福茶は場所によって作り方や飲み方が異なり、文化色に富んでいます。各地の習わしを比較することで、福茶への理解をより深められるでしょう。

山口県の旧徳地町

現在は山口市に吸収された山口県の旧徳地町地域には、「三朝の福茶」と呼ばれる、正月三ヶ日にお茶と梅干し、砂糖を混ぜた福茶を飲む風習があります。
この地域は、カワラケツメイを中心に地元産原料でつくる健康茶の栽培が盛んなため、今日も福茶の風習が残っているのかもしれません。

長崎県佐世保市吉井町

長崎県佐世保市吉井町では、住民が元旦に若水を使って淹れたお茶と一緒に、梅干しや大根、吊るし柿、昆布を食べ、無病息災を祈ります。
この地域で福茶を飲む風習は、2005年に編入されて無くなった旧北浦郡吉井町から残る風習ですが、近隣地域は世知原茶などお茶の製造も盛んであるため、実際はより広い範囲に福茶の風習が広まっている可能性があります。

静岡県袋井町

静岡県袋井市では、節分に福茶を飲む風習があります。
具体的には、茶釜に豆まき用の豆を3粒入れて、沸かした湯でお茶を入れます。この時、家族団欒の中で、茶釜の中にある杓で豆をすくいあげた人に1年幸運が訪れると言われています。

節分という季節の節目にぜひ福茶を

今回は、邪気を払う縁起物として受け継がれてきた福茶の意味や成り立ちについてご紹介してきました。福茶は縁起物としてご利益があるだけでなく、使用している原料から健康にも良いため、この記事を機に当店の福茶セットで味わってみてはいかがでしょうか。

福茶の販売

引用(参考)

注1 博学こだわり倶楽部『お寺と神社 素朴な疑問が解ける本 お経を読むときに叩く「木魚」が魚の形をしている意味とは?』河出書房新社(2013年)

注2 神崎宣武『「まつり」の食文化』角川書店(2005年)

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