粉末緑茶は、煎茶を粉末状にしたものです。茶葉を粉末にしていることから、お茶を作る過程でビタミンや食物繊維といった緑茶の栄養を捨てることなく、健康に良いと言われています。
縁結びの街「出雲」のお茶屋・茶三代一(ちゃさんだい)です。
今回は、粉末緑茶の飲用上のメリットや原料となる煎茶の効能について紹介します。デメリットについても触れますので、お茶選びの際などに参考にしてくださいね。
粉末緑茶の原料である煎茶の効能
カテキンの含有量が多く、抹茶よりも健康に良いとされる粉末緑茶ですが、原料である煎茶にはどのような効能があるのでしょうか。
- コレステロール値を下げる
- 脳の活性化
- 風邪、インフルエンザの予防になる
- 虫歯予防
- 口臭予防
以上5つの効能に焦点を絞り、ご紹介したいと思います。
コレステロール値を下げる
煎茶などの緑茶は、主成分のポリフェノールの作用などで、体内の総コレステロールと悪玉コレステロールのレベルが下がると言われています。
コレステロールは、動脈硬化の危険因子になるため、心臓病や脳卒中といった心血管疾患のリスクを低減させます。この点、煎茶は、生命に危険を及ぼす疾患の発症リスクを下げると言えます。
脳の活性化
煎茶に含まれるカフェインやカテキンは、脳の働きを活性化させる効果があります。この脳機能の改善効果は、短期的ものに限らず、加齢に伴う脳機能の低下にも効くとされています。
海外では、緑茶に含まれるカテキン化合物が、被験体の動物のニューロンにさまざまな保護機能をもたらし、アルツハイマー病などの認知症のリスクを低下させる可能性があると研究成果が明らかになっています。
また、緑茶に含まれるテアニンも脳の老化を予防することが研究でわかっています。
風邪、インフルエンザの予防になる
煎茶に含まれるカテキンは、インフルエンザなどの風邪のウイルスが鼻や喉の粘膜細胞に感染するのを防ぐとされています。
これは、カテキンがインフルエンザウイルスの赤血球凝集素と呼ばれるスパイクに結合し、ウイルスが人体に結合するのを防ぐ作用が働くためです。こうした感染予防効果は、インフルエンザの流行を引き起こすA型ウイルスとB型ウイルスの両方で効果が実証されています。
ちなみに、カテキンを構成する苦味と渋みの成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)は、新型コロナウイルスの病原性を抑制する可能性があるとの研究成果が、インドERA医科大学の研究者より明らかになっています(注1)。
虫歯予防
風邪などに効くカテキンの抗菌作用は、虫歯菌に有効だと言われています。これは、タンパク質に結合するカテキンの性質が、タンパク質でできている虫歯菌にも作用するためです。
また、カテキンは、歯垢の合成要素である酵素の働きを阻害する働きがあります。この2つの効果により、緑茶は虫歯予防に良いと言われています。
口臭の改善
煎茶に含まれるカテキンは、口腔の健康にも効果があります。口内の細菌に対して抗菌効果を発揮するほか、揮発性硫黄化合物(VSC)など口臭の原因物質と結合し、消臭を促してくれるからです。
実際、海外の研究では、カテキンが、細菌の増殖を抑制し、口臭のリスクを低減させることが示唆されています。
ただ、カテキンの口臭予防効果はそれほど大きくないのがデメリットです。日本歯科大学の研究では、総カテキン濃度0.25%の洗口液に口臭効果があったものの、効果は小さかったことが判明しています。
粉末緑茶とは?
粉末緑茶は、煎茶を粉末にしたものです。茶葉が粉末状になっているため、お湯で溶いてそのまま飲めるという特徴を持っています。
なお、煎茶は、茶の樹に覆いをかけて日光を遮るなどの被覆栽培ではなく、通常の方法で育てた茶葉を指します。日差しをたくさん浴びた茶葉は、被覆栽培した碾茶(てんちゃ)と異なり、旨味成分のテアニンが少ない一方、緑茶成分であるカテキンを多く含むため、体に良いという特徴があります。
煎茶を原料とする粉末緑茶は、碾茶を石臼でひいた抹茶などより、価格が安い傾向があります。これは、コストがかかる被覆栽培をしておらず、人件費や製造費が抑えられているからです。
粉末緑茶とインスタント緑茶の違いは?
「粉末緑茶」と「インスタント緑茶」はどう違うの?というご質問を良くいただきます。
粉末緑茶が緑茶だけで出来ているのに対して、インスタント緑茶は一度抽出した緑茶をデキストリンなどと結合させて顆粒状にし、溶けやすくしたものです。
粉末緑茶は食物繊維などが残っているので完全には溶けませんが、インスタント緑茶はお湯でもお水でもサッと溶けるのが特徴です。栄養的には粉末緑茶の方が多く摂取することができます。
粉末緑茶の飲用上のメリット
続いて、粉末緑茶の飲用上のメリットについてご紹介します。飲用上のメリットについて知ることは、健康効果よりも、実用性に関心がある人に適した内容かもしれません。実際に飲用して確かめてみましょう。
手軽に簡単に淹れられる
粉末緑茶は、その名の通り、粉であるため、お湯もしくは水を淹れるだけで気軽に飲むことができます。
これに対し、茶葉でお茶を淹れる場合は、急須が必要な上、時間を入れて成分を抽出するため、淹れるまでに時間がかかります。茶葉は成分を抽出後にゴミとなるため、後片付けも手間がかかります。緑茶を水出しで飲む際も同様です。
これを踏まえると、粉末緑茶は気軽に淹れられるお茶と言えると思います。
茶殻が出ないため生ゴミが出ない
粉末緑茶は、茶葉で淹れるお茶と違って茶殻が出ないため、処分が煩わしい生ゴミが発生しません。
茶殻は、冷蔵庫に臭い取りに使えるほか、お茶パックに入れた状態でシンクの掃除に使えるなど、実用性はあります。ただ、多くの家庭、事業所にとって茶殻は手間のかかる存在なのは確かです。
こうした茶殻が出ない粉末緑茶の特徴は、特にお茶の使用量が多い事業所にとって嬉しいメリットなのではないでしょうか。
茶殻に7割の栄養が残っていることから、成分を丸ごと摂取できる
粉末緑茶は、茶葉の成分が丸ごと入っているため、カテキンなどの緑茶成分を丸ごと摂取できます。これは、栄養成分の多くが抜けた状態で飲む、急須で入れたお茶と対照的な特徴です。
実際に、緑茶成分のうち、カテキンは急須で淹れると茶葉に含まれている3割しかお茶に溶け出ないと言われています。これに対し、粉末緑茶は、茶葉に含まれているカテキンをほぼ全て摂取できるため、効率の良い栄養補給が可能になります。
前述のように、カテキンは、風邪や虫歯の予防、口臭改善といった効果があるため、このような飲用上のメリットは健康を気にする愛用者に嬉しい特徴と言えます。
少ない容量でたくさん淹れられるため経済的
粉末緑茶は、少ない容量でたくさん淹れられるため経済的です。
湯呑み1杯分のお茶を淹れるのに必要な粉末緑茶の量は、おおよそ0.25グラムから0.5グラムと言われています。急須で1杯分のお茶を淹れる場合にかかる茶葉の量が2gとされていますので、粉末緑茶は単純計算で、急須で淹れる場合の4分の1から8分の1の容量でお茶を淹れられるのです。
これらのことから、粉末緑茶は非常に安い値段でお茶を作ることができるとわかります。
焼酎の割り材にもおすすめ
粉末緑茶は、液体に溶けやすいため、焼酎の割り材におすすめです。焼酎を緑茶で割る「緑茶ハイ」を簡単に作ることができます。
緑茶ハイは、低糖質や低カロリー、プリン体ゼロでダイエット中の人でも気軽に飲めるほか、緑茶にビタミンCやカフェインが含まれていることから、アルコールの分解が促され、二日酔いになりにくいと言われています。
多くのメリットがあるため、お酒好きの人は粉末緑茶を水に溶かし、緑茶ハイを試してみてくださいね。
粉末緑茶の飲用上のデメリット
粉末緑茶の飲用上のデメリットについても解説します。粉末緑茶のデメリットは、主に粉末という性質によるものと、煎茶の含有成分を起因とするものに集約されます。いずれも極端に悪い管理、摂取でなければ防げるため、気を付ける点として頭に入れておくと良いと思います。
光や空気の影響を受けやすく劣化しやすい
粉末緑茶は、普通の茶葉よりも、光や空気、熱の影響を受けやすく、劣化しやすいと言われています。
このため、粉末茶葉は、酸素や光、高温による劣化を防ぐため、アルミ製の袋に入れているケースが多いです。また、酸化による劣化を防ぐために脱酸素剤を封入する場合もあります。
すでに製品に劣化防止の対策が施されているケースが多いのですが、購入し手元で保存する場合は、常温での管理か、栄養成分や機能性成分の減少を防ぐために、冷蔵あるいは冷凍での管理をおすすめします。
カテキンの摂りすぎで便秘、貧血になる
粉末緑茶に含まれるカテキンは、健康増進で効果を発揮する一方、摂りすぎると貧血や便秘になりやすい傾向があります。
カテキンは食物に含まれる鉄分と結合しやすいことから、体内の鉄分吸収に支障を及ぼすからです。この結果として、貧血を引き起こすとも言われています。
また、カテキンはタンパク質と結合して凝集させる収れん作用があり、腸の粘膜のけいれんを抑える効果があります。この結果、柔らかい便が硬くなり、便秘になりやすいとされます。カテキンは、腸内の善玉菌を増やし、便秘を解消する効果があるため、意外な副作用と言えると思います。
シュウ酸の摂りすぎで尿路結石のリスクが高まる
粉末緑茶に含まれるシュウ酸は、体内のカルシウムと結合し、シュウ酸カルシウムと変化します。シュウ酸カルシウムは、腎臓などの泌尿器に集められていくうちに結晶化が始まり、結晶化が進行すると尿路結石の原因となると言われています。
尿路結石は、結石が尿路を塞いでしまうと痛みを伴ったり、腎盂腎炎などの合併症を引き起こすと言われています。再発リスクも高く、一度でもかかった経験のある人は注意が必要です。
カフェインの摂りすぎで不眠になる
粉末緑茶の含有成分であるカフェインは、交感神経を刺激する作用があり、その作用に伴って脈拍や血圧が上昇した結果、不眠になると言われています。
粉末緑茶は少ない容量でお茶を淹れられるため、カフェインの過剰摂取になる可能性は低いと思いますが、注意は欠かせません。
粉末緑茶は健康と財布の両方に優しい万能茶
粉末緑茶は、過剰に摂取すると貧血や便秘、不眠といった健康へのマイナス効果を生むことがありますが、適度に摂取すると、栄養分を100%摂取できることもあり、健康効果を存分に堪能可能です。
少ない容量で茶葉の何倍も淹れられることから経済的であり、粉末緑茶は健康と財布の両方に優しい万能茶と言えます。
全てのお茶の愛好者にとっておすすめできる茶製品であるため、この記事をきっかけに試してみてはいかがでしょうか。
粉末緑茶の販売
引用:注1 リサーチスクエア「Identification of Dietary Molecules as Therapeutic Agents to Combat COVID-19 Using Molecular Docking Studies」