夏の風物詩的な定番飲料として知られる麦茶。香ばしい香りとスッキリとした味わいに加え、値段がお手頃なことから、多くの人に愛されています。
半世紀も前から庶民の飲み物として親しまれてきましたが、昨今は麦茶が持つ健康効果が明らかになり、根強い人気につながっています。
しかし、麦茶の効能について、熟知している人は多くはありません。
縁結びの街「出雲」のお茶屋・茶三代一(ちゃさんだい)です。
今回は、麦茶が健康にもたらす効能のほか、デメリットや美味しい麦茶の作り方についてご紹介します。
ぜひお茶を飲むときに意識してもらえると幸いです。
麦茶とは?
まず麦茶は何を意味し、どのような種類があるかをご紹介します。麦茶を何気なく飲んでいる方も多いと思いますが、言葉の意味を理解することで、麦茶の種類などがわかるようになると、自分の好みの把握も可能になります。この記事を味わい深い麦茶の世界を知る足がかりと捉え、何度も読んでみてくださいね。
麦茶の定義
麦茶は、焙煎した大麦のタネを煎じた飲み物です。麦湯とも言われています。
国内では1970年代以降、外出先やスポーツといったシーンでの暑さ対策として飲まれてきましたが、昨今は、夏に限らず、年間を通じて飲まれています。 お茶の多くは、100ml当たり20〜30mgのカフェインが入っていますが、麦茶は、カフェインのほか、保存料や甘味料などの添加物が一切含まれていません。これにより、健康に優しく、お子様から年配の方、妊娠中の方など幅広い層が安心して飲める飲料水となっています。
麦茶の種類
麦茶の種類は、使用される大麦の原料の違いによって分類されます。国内で流通する麦茶は、小粒大麦と大粒大麦、はだか麦の3種類の麦が使われています(注1)。
小粒大麦は、でんぷん質が少ない反面、たんぱく質を適度に含むことから、麦茶に最適な麦の代表格です。麦本来の風味が生かされている原料であり、大麦ご飯や大麦麺にも使われます。
大粒大麦は、粒が大きい麦であり、デンプン質が多く、たんぱく質が少ないという小粒大麦とは対照的な成分となっています。麦茶にも使われますが、主な用途はビールや麦焼酎が中心です。
はだか麦は、六条大麦の皮がない状態の麦を意味します。はだか麦から作った麦茶は糖質やカルシウムが多く含まれるほか、皮がないことから、透き通った奇麗な麦茶に仕上がります。
麦茶はノンカフェイン
麦茶は、原料が大麦であるため、カフェインは含まれません。これは、天然成分としてカフェインが含まれる茶葉を原料にしている煎茶や抹茶、番茶など一般的なお茶とは対照的な特徴です。
カフェインは過剰摂取によって心拍数の増加や便秘といった健康へのマイナス効果をもたらすと言われています。このため、カフェインを含まない麦茶は、人体への負担が少ない安全な飲み物といえると思います。
アレルギーが生じる可能性は低い
麦茶は小麦ではなく、大麦の種子を煎じて作った飲み物です。このため、アレルギーが起きる可能性はほとんどありません(注5)。とても安全ですね。
さらに、食品アレルギー症状を引き起こす特定原材料にも指定されておらず、比較的アレルギーの発生リスクは低いとみられます。
麦茶の効能
体に優しい健康効果が明らかになっている麦茶ですが、期待できる効能は主に下記の5つにまとめられます。
- 抗酸化
- 胃の粘膜保護
- 血流改善
- 熱中症対策になる
- 虫歯を予防する
いずれも健康を増進する上で重要な効能です。それぞれの効能を理解することで、麦茶を飲む意義がわかるようになります。お薬ではなく、あくまでもお茶ですので個人差はあると思いますが、自分だけでなく、ご家族の健康のために、麦茶の効能を把握してくださいね。
抗酸化
1つ目の麦茶の効能は、活性酸素を酸化で抑える抗酸化作用です。活性酸素は、老化やがん、生活習慣病の発症要因になることから、麦茶の抗酸化作用は健康効果が大きいといえます。
麦茶の抗酸化作用が認められたのは、1986年のことです。西九州大学食品研究室が研究を通じて初めて明らかにしました。
胃の粘膜保護
麦茶には、胃の粘膜を守る成分が含まれています。胃の粘膜は食物を消化する胃酸や消化酵素を分泌する役割などを持っていることから、この効能は健康にとってかなり大きな機能なのではないでしょうか。
胃の粘膜を守る麦茶の効能は、1998年に静岡大の備藤英男教授(農学博士)と、京都薬化大学の吉川雅之教授(薬学博士)が初めて証明しています(注2)。
血流改善
麦茶は、血液の流れを良くする血流効果があります。これは、麦茶の香り成分である「アルキルピラジン」に血流流動性の作用があるからだとされています(注3)。 こうした血流改善効果に焦点を当てた麦茶の開発研究が進んでいます。
熱中症対策になる
4つ目の麦茶の効能は、適度な飲用によって熱中症対策になることです。ミネラルウォーターの摂取は水分補給に終始するのに対し、ミネラル分を含有する麦茶は摂取することで発汗によって不足しやすいマグネシウムやカリウムといったミネラル分の補給を可能にします。
ただ、麦茶には塩分が含まれていません。このため、間食に梅干しや塩せんべいを食べるなどして、麦茶の摂取方法を工夫すると良いかもしれませんね。
虫歯を予防する
意外かもしれませんが、麦茶には、虫歯を予防する効果があります。これは、麦茶の原料となる焙煎大麦に、虫歯を誘発するミュータンス菌や微生物の吸着を妨げる働きがあるからだとされています(注4)。
必ずしも虫歯予防薬と同等の効果を得られる訳ではありませんが、虫歯予防のきっかけとして飲用すると良いと思います。
麦茶のデメリット
さまざまな効能がある麦茶ですが、実はデメリットも存在します。複数のサイトや文献からまとめると、デメリットは以下の2点です。
- 大量摂取により体の冷え
- 同じく大量摂取による胃腸への負担増
両方とも注意していれば、十分に防げる項目ですが、用心に越したことはありません。小さなお子様に飲ませてあげる際などに注意してください。
大量摂取は体を冷やす
麦茶の体を冷やす機能は相当なものがあります。このため、大量に摂取すると、急激に体温を下げてしまうデメリットがあるようです。
こうしたデメリットは、特に冷え性だったり、風邪を引いたりしている人にダメージを与えます。時には、麦茶を温めたりして飲んでみてくださいね。
胃腸に負担をかけることも
体を冷やすデメリットと似ていますが、麦茶は、大量摂取によって胃腸に負担を掛けることがあります。特に夏場は麦茶の温度が低いため、摂取による胃腸への負担が大きく、消化能力の低下も起こしてしまうでしょう。
こんなことが起きてしまったら、大変です。体を冷やすのを防ぐのと同じように、麦茶を少しずつ飲むなど、飲み方を工夫してください。
美味しい麦茶の作り方
麦茶の作り方は、パックの水出しとお湯出し、丸粒の煮出しの3種類です。
普段麦茶を作っている人はなかなか意識しないと思いますが、実は麦茶は、パックを入れるタイミングなど、作り方に応じて風味や味が変わる特徴があります。
言い換えれば、作り方を変えるだけで、美味しい麦茶を作れるのです。ここから紹介する作り方と美味しい麦茶を作るコツをぜひ参考にしてみてください。
麦茶のパックを水出し
麦茶のパックを水出しする方法は、とてもシンプルです。1リットルの水が入った容器に、市販のパックを入れ、冷蔵庫で1〜2時間待つだけで完成します。
このように水出し麦茶を作るのは簡単ですが、麦の旨みを引き出して麦茶を美味しくするコツがあります。
まず3分の1の量までお湯が入った容器の中に麦茶パックを入れ、10分待ちます。10分がたった後、残りの3分の2に水を注入。所定の1〜2時間を待って麦茶のパックを容器から取り出します。
こうした工程を踏むと、麦に含まれた苦味と雑味が取れつつも、美味しい味がある麦茶が完成します。この方法もさほど難しくはありませんね。
麦茶パックをお湯出し
パックをお湯出しして麦茶を作る方法も、シンプルです。
水を1.5リットル沸騰させて火を止め、パックを入れて5〜10分置きます。冷ましたあと、頃合いを見てパックを取り出すと、お湯出しの麦茶が完成します。
パックを煮出さず、火を止めたあとに入れることにより、麦茶の苦味と雑味が出にくくなります。 お湯出しで作った麦茶は、水出しと比べて、香り成分のアルキルピラジンが活性化する傾向があります。風味、味の両方でコクのある麦茶にしたいと考える人は、お湯出しで麦茶を作るとよいかもしれませんね。
丸粒を煮出し
丸粒の大麦を煮出す方法も、さほど難しくはありません。
まず沸騰中のお湯が1.5リットル入ったやかんの中に、コップ1杯分(約30g)の麦茶を入れます。パックの煮出しと同じように、5〜10分程度煮出し、ビールのような色になったら丸粒の煮出し麦茶の完成です。
完成後は、麦茶の粒を取り除き、保存容器に移して冷蔵庫に入れておきましょう。
丸粒の煮出し麦茶を美味しくするためには、調理工程に追い煎りを加える方法が有効です。追い煎りは、丸粒をお湯に入れる前に実施する工程で、丸粒麦茶をフライパンで乾煎りします。
丸粒麦茶を乾煎りすることで、麦茶の風味がより香ばしく、豊かになると言われています。
夏に飲む飲料水は麦茶がおすすめ
栄養素や作りやすさなど総合的に考えると、麦茶が夏に飲む飲料水として最もおすすめだといえるのではないでしょうか。
麦茶のパックは各メーカーから様々な種類のものが発売されていますが、経済的に優しいのも利点の1つです。ペットボトルのお茶に比べると一手間かかりますが、十分に購入費用をペイできますよ。
茶三代一では、麦茶など、お茶に関連した情報を発信しています。出雲市が認定する「出雲ブランド商品」にも選ばれている出雲産むぎ茶など、多彩な商品も取り扱っているため、実際に手に取り、お茶の世界を堪能してみてくださいね。
引用(参考)
注1 全国麦茶工業協同組合|麦茶Q&A
注2 全国麦茶工業協同組合|麦茶の効能
注3 カゴメ株式会社、独立行政法人食品総合研究所マイクロチャネルアレイ工学チーム|麦茶の飲用が血液流動性に及ぼす影響
注4 Journal of Agricultural and Food Chemistry|Effect of Barley Coffee on the Adhesive Properties of Oral Streptococci
注5 山梨大学アレルギーセンター|小麦アレルギーでも麦茶を飲ませてもよいでしょうか。