お知らせ

【抹茶】口切りの茶事とは?時期はいつ?用意する道具や着もの、おすすめのお菓子を含めて徹底解説

みなさまは、口切りの茶事という世界をご存じですか?
茶道を始めたばかりの方は聞いたことがあるか、まだご存じでないかもしれません。
というのも、口切りの茶事はお茶を習っている人でも経験する機会が少ない厳かな茶事です。

縁結びの街「出雲」のお茶屋・茶三代一(ちゃさんだい)です。
今回は、口切りの茶事のお道具、茶事の流れ、主菓子などの特徴をご説明していきますので、最後までご覧ください。そして、さらに興味を持っていただけると幸いです。

お茶を習っていなくても茶壷の存在や、石臼で抹茶ができあがることはご存じと思います。
ニュースで紹介されている神社の口切りの儀式を見たことがあれば、お茶は神事になるほど貴重であったことがわかります。

5月に新茶を摘み11月までの期間、お茶は茶壷の中にいれて熟成されていきます。茶壷を開封し、新鮮なお茶をいただくのは、とても貴重な体験になります。
お茶の稽古をされている方々は、初冬の炉開きに心を躍らせ、その時を迎えられます。
その炉開きの時季と関わりがあるのが、口切りの茶事です。

お稽古で茶壷の拝見を習っているけれど、どのような茶事かわからない方も多いと思います。

口切りの茶事とは?

口切りとは、初夏の頃に抹茶になる前の新茶(葉茶)を詰めた茶壷の口の封を切って新しいお茶を使い始めることを意味します。
茶臼で葉茶を挽いて抹茶(濃茶)を点てて客に出す茶事を「口切りの茶事」と言います。
古来、茶人の正月といわれるほど厳粛なもので、茶道の一年の始まりにあたる重要な行事です。

口切りの茶事はいつ?

炉開きの時季にあわせます。2022年は11月7日に立冬を迎え、その時季が炉開き(ろびらき)です。
炉開き以降から初冬にかけて口切りの茶事がおこなわれます。古来、口切りの茶事は茶壷をもつ数寄者でないと催さないとされています。茶家においては、茶壷を茶師にあずけます。口切りの時季になると、茶師が茶家を訪ね茶壷を届ける伝統があります。
炉開きの時は、茶室の露地や席の装いが改められます。口切りの茶事を催す時は、畳の表替え、壁の腰張り、障子の張替えと新装を凝らせたり、茶の庭の垣や樋の青竹を新しくしたり等、あたらしい気を漂わせる「改まった雰囲気」を醸し出すことに専念します。

口切りの茶事で用意する道具や着物は?

口切りの茶事で用意する道具は、以下3点です。

  • 葉茶じょうご
  • 茶臼
  • 茶ふるい箱

葉茶じょうご

葉茶じょうごとは、木製の茶壷の口切りをする時の道具をおいている六角形の箱のことです。
箱には、口切りに使用する小刀、封紙とする和紙、和紙に塗る糊板、糊ヘラ、薄茶と濃茶を入れる挽家を左右におきます。薄茶を入れた挽家の蓋には朱で「詰」と記されています。他に、朱肉、印判をおきます。茶壷の口切りをする時に使用する道具一式です。

茶臼

茶臼とは、葉茶を石臼で抹茶にするための道具。反時計回りに手で引き、ゴロゴロという音がたたないよう静かに回しながら葉茶を挽茶にしていきます。

茶ふるい箱

茶ふるい箱とは、臼で挽いた挽茶を細かくふるうのに用いる道具です。
お菓子でも用いられる粉をふるうものとイメージは同じで、把手がある長方形の蓋付の箱の中に目の細かい金網を張った掛子(かけご)があり、この金網の上に抹茶を入れ、箱の蓋をして、把手を前後に動かすと、ふるわれた茶が箱の底に溜まる仕組みです。

着物について

口切りの茶事の装いは、正式な行事になるため、男性・女性ともに紋付の格の高い着物を装う必要があります。「茶人のお正月」といわれる口切りの茶事に招かれることは栄誉あることなのです。男性は、紋付きの着物に袴の装い。
女性は、紋付の色無地、帯は袋帯で格調の高い有識文様・吉祥文様などが選ばれます。

口切りの茶事の流れ

茶事の様式は炉の正午に準じます。炉の正午とは、最も正式な茶事で、すべての茶事の基本です。正午から開始し、4時間ほどかけて行われます。

寄付→迎付け→席入り→初座→中立ち→後座→退出の流れは同じです。
席入りから初座の間に茶壷の拝見、口切りが行われます。

客は、15分前に到着し、待合部屋で身支度を整え、白湯をいただきます。
露地口で露地草履にはきかえ、腰掛待合にでます。亭主の迎え付けを受けて黙礼し、蹲で手と口を清めます。
にじり口から席入りし、床、点前座を拝見して席につきます。
亭主と順にあいさつを交わします。正客が亭主に茶壷の拝見を所望します。

初座までの間、亭主は、床の間に飾っていた茶壷を網に入れて床から持ち出し、茶道口付近に下がり、口覆いをほどき、正客に拝見してもらいます。客は180度壺を回して拝見します。
初座で床に網に入った状態の茶壷が飾られていたら、拝見はできないという意味がありますのでご注意ください。

御茶入日記は客に順次拝見してもらいます。
御茶入日記とは、茶壷を入れた箱の蓋の裏に茶壷に詰めた年月日・茶師銘が記入されているもの。茶壷が一巡しましたら、網に入れ、客と亭主で壺についての問答があります。
亭主は茶壷の口緒をほどき、茶壷の下座に葉じょうごを置いて、小刀で茶壷の口(和紙で包まれている)を切ります。

正客は御茶入日記より、お好みの濃茶を所望し亭主は茶壷より濃茶を取り出します。
濃茶は葉じょうごに置いてある挽家に入れ、茶壷の口を美濃和紙に糊をつけてふさぎ、朱肉を押した印判で封をします。

茶壷から出した濃茶を亭主は茶臼でかけます。さらに臼を羽箒で改めてから薄茶を挽き、挽きあがったら茶入、薄器にいれます。

次に初炭点前から、客は懐石をいただき、主菓子をいただきます。
口切の懐石は正月の様に、煮物には雑煮餅を出し、八寸その他に正月の三種肴を用いるのが約束とされています。
途中休憩(中立)し、客はいったん腰掛待合へ戻ります。その間に亭主は掛物を引き、席中を清め、花を挿し、茶壷は飾り結びをし、床に飾ります。水指の前には茶臼で挽いた濃茶を入れた、袋茶入を飾っておきます。
準備が完了したら合図の鳴り物により、後座が始まります。
再び客は茶室に席入りし濃茶点前が始まります。茶入れの抹茶は正客が所望した茶壷の抹茶です。次の薄茶の前に火を直す後炭点前があり、干菓子と薄茶をいただきます。

亭主が終わりの挨拶をし、客は床・道具を拝見して退出します。
亭主の見送りを受けて寄付に戻り帰路につきます。

口切りの茶事でおすすめのお菓子

亥の子餅

炉開きで有名な主菓子といえば、「亥の子持ち」です。菓子の形はイノシシの子、ウリ坊の模様を模した焼き印をしています。イノシシ(亥)は陰陽五行で水性に属し、火災を逃れるという信仰があります。江戸時代より亥の月の亥の日に囲炉裏や炬燵を開いて火鉢を出す風習がありました。亥の刻に食べて無病息災を願っていました。
また、西日本では亥の子祭りという実りの秋を喜ぶ収穫祭があります。亥の子餅には、子供をたくさん生むイノシシにちなんで子宝の願いも込められています。

茶道専門の和菓子ではなく、一般のお店でも販売しており、簡単に入手ができます。

織部まんじゅう

白い薯蕷饅頭の上に緑色でぼかし、井桁や梅の焼印をしたものです。意匠は織部焼に似せてあります。古来、亥の日に織部焼を使うという習わしがありました。亥の月・亥の日に行われる炉開きの日に織部まんじゅうが選ばれる由縁です。織部焼とは、岐阜(美濃)で安土桃山時代に活躍した茶人古田織部が独特のデザインで作陶した有名な器です。緑釉の使い方が特徴的で、織部まんじゅうといえば、緑色をポイントとして表現している和菓子店が多いです。

イチョウ餅

炉開きの主菓子と選ばれるイチョウ餅。イチョウの木は火事で火が枝葉にうつろうとすると幹から水が吹き出すといわれています。東京は江戸の頃から火事が多く、現在もイチョウ並木が多い理由は水分を含んでいる木なので、火事除けの効果があるということです。そのため、イチョウ餅は火除けの意味があります。イチョウ餅は上記2つの和菓子に比べると入手ルートが限られるかもしれませんが、百貨店で入手できる確率が高い和菓子です。

柿と栗

柿、栗をモチーフにした和菓子です。茶家は口切りまでは茶壷を茶師に預けています。
口切りの時季になると、茶師は茶家へ茶壷を届けにいくのですが、そのときに柿と栗を持参するのがしきたりだそうです。昔は、干し柿を主菓子に使うことがありました。

亥の子餅・織部まんじゅう・イチョウ餅が炉開きに主菓子として選ばれるのは”火”に関係しています。炉は風炉と違い、”火”の距離が主客に近いため、火除けへの願いがこめられています。

口切りの茶事のまとめ

口切りの茶事とは、炉開きの時季に新茶を入れた茶壷の口封を切り、みんなで熟成された新茶を味わい炉による温かさを感じる初冬の行事です。
また、茶人の正月といわれ格式高い茶事とされています。
そのため、茶室のしつらえを新たにし、格式高い着物を装い、茶壷を拝見道具とし、炉の正午と同じ格式高い茶事の流れで行われていきます。
口切りの茶事の独自性については、茶壷をお道具として扱うことが少ない、複雑な紐の結び方で封をする、茶臼などの目新しいお道具で抹茶ができあがる臨場感、濃茶を所望できる遊びの要素などがあります。

主菓子は火除けの意味が強い「亥の子餅」「織部まんじゅう」「イチョウ餅」が代表的です。

茶師に茶壷を預ける茶家・数寄者が執り行う口切りの茶事は遠い世界です。しかし、茶道教室のお稽古の一つとして口切りの茶事を学び実践する場が増えています。

興味があり参加したいけれど、周りでそのような機会がなかなかない。
そういう方は、有名な寺院の企画で口切り茶事を行っていることもありますので、インターネットで調べてみてはいかがでしょうか。

11月から冬にかけて、茶道の世界はお正月が2回も来ます。炉開きの喜びと熟成したお茶を祝う楽しみを体験してみませんか。

お抹茶の販売

当店では出雲に家元があります茶道・三斎流御家元御好のお抹茶を販売しております。
熟成した味を是非お楽しみください。

関連商品

PAGE TOP